RoboCup2017 Rescue Rapidly Manufactured Robot Competition (ラピッドリーマニュファクチャ-ドロボット競技) に出場したロボットのプレゼンテーションです。
ROBOT

チーム“TUPAC”は,今年初めてRMRCに参加しました。
私はチームの外部アシスタントとして,ロボットの機械設計や組み立てに関わりました。
※外部からのロボットへの関与はOK

member
ロボットに関わったメンバーです。

全員が元RoboCupJuniorの参加者であり,KpとはGcraudNanoで一緒に活動していました。
Kpは当ブログでたまーに記事を書いてくれています(僕がお願いしてるんですが)。

大会の簡単な紹介

その名の通りロボカップレスキューの,RapidlyにManufactuardされたロボットの大会です。
RMRCと略して表記されることが多いです。
Rapidly:素早く
Manufactured:製作された

2016年6月時点でのルールブックです。
名古屋世界大会では,このルールが適用され競技が行われました。
RoboCup Rescue Rulebook
Rapidly Manufactured Robot League/Mini Arena Edition

P1020824
時間内にフィールドを往復した回数を競う競技
操縦者はフィールドに背中を向けて,ロボットから送られてくる映像だけで操縦を行う。

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自分たちで決めたルートを周回する競技

<以下きーくち解説>

大会は5日間行われ、調整日と競技日がありました。
上が三日目(予選),下が五日目(決勝)で使われたフィールドです。
見て分かる通り,予選フィールドを立体的に組み合わせることで,決勝フィールドが構成されています。予選ではないコースもあったり、決勝フィールドも四日目にみんなで作ったり...まさに.Rapidly Manufactured!
<以上きーくち>

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世界中から全10チームが集まりました。
Equipe Nhão (ブラジル)
GÊNESIS (ブラジル)
Siegel (ブラジル)
King's Legacy (オーストラリア)
S.A.R.T (オーストラリア)
Blue Storm (アメリカ合衆国)
LabCombo (中国)
Magistry (メキシコ)
Team AIT (日本)
TUPAC (日本)

大会の詳細はこちら
Welcome to the RoboCupRescue RMRC!


ロボットの概要

Robot Abstract
RMRCはRoboCupRescueの小型版(簡易版)の位置付けであるため,メジャーのロボットをそのまま縮小したようなデザインで設計しました。

今回全てのパーツは自分達で設計し,オープンプラットフォームとして全てのリソースをオンラインで公開しています。

RMRCとしては,今後標準プラットフォームを使って多くのチームが参戦してくることを期待しているようです。
標準プラットフォームの写真
Emu Mini 2 (Picture)

今回製作したロボットは,2017年RMRC出場チームの中で一番メジャーのロボットに近い機構をしていました。そのためか,メジャーリーグから多くの注目を集めたそうです。

ロボットの製作過程

AutoCAD
AutoCADの設計図面です。

向かって左半分が,ロボットの全体的なデザインで,向かって右半分がパーツ・デザインとアームの設計になります。ハードウェアのおおまかなデザイン(大きさや必要な機構など)は,きーくちが設計を担当しました。またロボットアームはTADAが新規で設計をして,最終的に1台のロボットに組み上げています。

version
開発自体は非常にスケジュールの厳しいものでした。
高専4年になり,学業が忙しくなる中でのロボット製作は大変です。

私がきーくちから図面を受け取り,設計の不備を修正しながら切削を続け,実際に動くところまで約1ヶ月でした。この間は本当に死ぬかと思いましたが,なんとか動くところまでは仕上げ,無事大会で動かすことができました。
大会の名前の通り,非常にRapidlyにManufactureringできたと思います。

しかし,アームの設計にかなりボロが出てしまいました。
分かりきった事ではありますが,トルクが約30[kg*cm]程度のサーボモータでは,このサイズのアームのモーメントを支えきれません。大会中に1個サーボを故障した挙句アームのサーボをDisableして競技に参加していたそうです(申し訳ない…)。

Elec
Kpの回路製作の様子です。

回路設計は,システムの構成が決まった段階で完全に分業し,ハードウェア担当から基板外形の連絡があるのみで,回路担当は完全に独立で動いていました。

ロボットのシステムは,全系統がGR-PEACH1台で動いてます。PEACHの役割は完全にペリフェラルの中継機能のみで,LANコネクタからインターネットを経由して,MacBook上の専用プログラム(自作)からパケットを受信しロボットが動きます。
詳細はKpに説明お願いしたい


IMG_0265
全てのパーツの切削には,ORIGINALMINDさんのKitMill RD300を使しました。
写真は厚さ5[mm]のA7075板から,イモネジ締結用ハブを削り出している様子。

今回のロボットは,製作期間短縮のために殆どのパーツに樹脂(ポリカーボネイト)を使っています
直径3mmのエンドミルで一気に荒削りする事で,アルミの10倍以上のスピードで加工を進めました。

正直,切り込み2[mm]とかいう荒業に走ったのは初めてだったのでドキドキしましたが,断面が多少荒れる程度で加工ができました。というか一部界隈は常にこれくらいの条件で削っているらしい(?)

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1.5[mm]厚 A2017パーツ切削の様子
3[mm]未満の薄板を加工する時は,ブルーシートをパーツ固定に使っています。
真似する場合は自己責任で

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中央クローラーのアセンブリ
アクチュエータはマブチ380モータとIG32の組み合わせを使っています。

今回のロボットにはクローラーのアジャスト機能が搭載されていないので,今後改善しなくてはいけません。実際,大会では何度もクローラーが外れてしまったようです。製作期間を理由に設計をサボッたツケですね…。

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クローラーユニットの組立状態です。
ギアで前後のフリッパーに伝達しつつ,フレームをサーボモータで駆動する構造です。

シニアのロボットをきちんと見る機会を設けられなかったのですが,およそこういう構造に落ち着くんじゃないかと思っています。フリッパーと中央クローラーが同軸になると多少複雑になるかもしれません。早いうちにいろんなロボットを偵察に行かねば…。

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クローラーはベルトを付けた状態で独立に分解できます。

本当はもう少し頭のいい分割を考えたかったのですが,悩んでいる時間が無いためヤッツケでこうなりました。この状態で全てのクローラーは同期して動きます。中央クローラーのスプロケットについている2つのギアが,中央のギアボックスと噛み合うことで全体が連動します。


クローラー中央クローラーからフリッパーへの伝達機構です。

ロボットの側面に位置した,僅か6[mm]の厚さのフレームに伝達機構を組み込んであります。
このギアボックスをスリムに,かつ抵抗を少なく設計するのが非常に大変でした。クローラーを直列に並べてしまうと,内側か外側に伝達機構を設ける必要がありますが,サーボとの干渉を考えると外側に配置する事になります。

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ロボットアームのYaw軸の軸受機構です。

独自設計のスラストニードルベアリングを組み込みました。
2枚のスラストベアリングでアキシャル負荷を抑制する構造,ROBO-ONEで培った技術です。

ただ,サーボのトルク不足によりアームが使われる機会はほとんど無かったそうです…。
残念過ぎる(´;ω;`)

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フリッパー駆動のサーボモータには,RoboStar SBRS-5314HTGを採用しました。
Hobby King:RoboStar SBRS-5314HTG

何より価格が安価でトルクが高いため,多少制御が雑でも問題が無い用途には適しています。
ただ非常に厄介な部分も多く,特に反対軸側のサーボケースは煎餅よりも柔らかい貧弱ぶりで非常に驚きました。余りにも柔らかすぎて,メンバーと一緒に指でペキペキ砕いて捨ててました。

ボトムケースは,3Dプリンタを使って新しいものを作ることにしました。
幸いなことに,すぐに使えるデータがオンラインで公開されていたので,今回はそれを使用しました。
感謝感激です。
Thingiverse:RoboStar Servo Modified Bottom Panel

RobotArm
ロボットアームを実際に使用している様子

筒の中にあるマーカーを読んで,操縦者に送信します。
あらゆる方向から映像を取得する必要があるため,アームの自由度は5軸で設計しました。

アームの設計は,今後の課題です。
サーボモーターを直結した構造のアームでは,モーメントが増加する一方なので,リンク機構等用いてアクチュエータの位置を下げる必要があるかなと思います。

今後サーボモータの選定も兼ねて,設計を進めていきます。

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カメラの映像のみで走行
4本のフリッパーと,ロボットアームを上手く使ってロボットを操縦する必要があります。

現状のユーザーインターフェースでは,全ての管理をXbox360コントローラ1つで行いますが,正直限界があると思われるので,今後アームの操作にマスタースレーブを採用するなどして,操作性を向上させないといけません。

その他

操縦の様子

本当に難しそう…特に4本のフリッパーのうち前だけ(しかも片側ずつ)しか見れないのは…。
設計者は一度操縦してみないと,こういうの分からないので,機会を設けて操縦させてもらう必要がありそうです。操縦者から要望を聞くのも大事ですね。

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ロボットの操縦練習中

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最後にツーショット(東京にて)