時間が空いたので製作物の紹介をします。
今回は、新しいロボット用に設計したGP16A(ギアヘッド)用マウントパーツとシリコングリップオムニホイールの大まかな設計をまとめておきます。
まず、maxon純正ギアヘッドを平行に固定するためのマウントパーツについて
使用するモーターはRE16で、ギアヘッドはGP16Aを使用しています。GP16Aは、固定方法がM2ネジ2本のみとなっているため、競技ロボット用途だと、振動に対応できずに外れてしまうことがあります。
そこで、クランプ機構を用いてギアヘッドを固定する方式を取りました。
まだ実際に組み込んでいませんが、実際に組み込んだ時にはまた報告します。
クランプは、ロボット底面から1.5mmの六角レンチで締め付けができるよう設計しました。ロボット底板には、レンチを通すための穴を開けておく必要があります。
マウント底にはM3のタップが4か所切ってあり、簡単に固定できるようになっています。
軸受けにボールベアリングを挟んでみました。
GP16Aはスリーブ軸受けなので、他衝撃性に不安があったため、Nitroのゆーき先輩にアドバイス頂きながら実装しました。軸のふらつきが大きく改善されたので、効果はあるんじゃないかと思います。
今まではライトウェイトリーグの重量だったのであまり問題になりませんでしたが、オープン規格の重量で走らせると、軸受けがダメになってくるのは当然だと思います。
簡単な対策なので、ぜひしておきたいですね。
続いて、オムニホイールについてです。
前回、POMの円盤を切り出し、側面に溝を掘ってOリングをはめ込むタイプのサイドホイールを製作しましたが、溝が浅いとOリングが外れ、溝が深いとグリップしなくなる、結果的に大失敗なグリップが完成しました。
今回はその反省を生かして、新しい設計・方法でサイドホイールを製作しました。
グリップ材はシリコン、軸受けには黄銅、カバーはジュラルミン製です。
グリップにシリコンを選んだのは、単純にグリップ性能が高いのと、温度に強い(カーペットとの強い摩擦熱で劣化しない)、フィールドの白線を変色しない(黒ゴムは白線を黒く塗ってしまう恐れ)、が主な理由です。
1つのサイドホイールを作るのに必要な部品点数は全部で4つ
・シリコンワッシャー(MonotaRO URL)
・黄銅スペーサー(ヒロスギネット URL)
・CNC削り出しのパーツ x2点
正直言って生産性はものすごく低いです。
特に、CNC削り出しのパーツは、例えば20サイドホイールのオムニを4つ作るだけで
2[個/サイドホイール] x 20[サイドホイール/オムニホイール] x 4[オムニホイール]
なので、合計160[個]削り出す必要があるんです。
バリ取りはマジで苦労します…。
サイドホイールを180個(確かこのくらい)削り出しているところです。
加工時間が長く、オーバーヒート保護のため何回かに分けて加工しています。
写真は1.0[mm]のポケットが全部終了したところ、この次に、軸受け圧入穴(φ3.96)と外形切削をします。
写真は、関東大会出場のため、世界大会機のオムニホイールに、新しいサイドホイールを実装しているところです。ダイセンさんのオムニホイールだと、サイドホイールの軸は一本の針金だったと思いますが、自分が設計しているのは全て、軸を単体で用意しています。
サイドホイール軸に使用しているのは
・2x6 平行ピン 硬質(ステンレス) (MonotaRO URL)
本来ならもう少し個数/値段の良いものを探して買うべきだと思います。
関連商品でささっと選んでしまいました。
材料は、ある程度硬ければなんでも良いと思います。黄銅と鉄の組み合わせで、ある程度の滑りを得られるので、結果的に横滑りのロスが大幅に減ります。世界大会機に組み込んで走らせてみましたが、安定性が段違いでした。
グリップ材が外れる問題に関して、新しいタイプではグリップ材が板形状で奥まで入り込んでいるため、 基本的に外部からの圧力で外れることはありません。加えて、体積のあるシリコンゴムがダンパの役割を果たしてくれるので、走行中の振動が大きく改善されました(予想はしていたが思ったより効果があった)。
最後に、サイドホイールの組み立て手順を紹介します。
4つの部品を写真のように組み合わせます。
実際には、片側のジュラルミンパーツに軸受けを圧入したものを用意し、それにシリコンワッシャーとジュラルミンパーツ(もう片側)を乗せて、圧入をかけます。
ヒロスギさんのM2スペーサーは内径2.2φなので、φ2.2ピッタリの軸をボール盤に咥え、下にφ2.5くらいの穴を開けた土台を用意し、その間に上の組み合わせを挟み込み、軸を通した状態でエイヤッと圧入します。
完成するとこんな感じになります。
以上です、では!
質問などはコメントにお願いします。
まず、maxon純正ギアヘッドを平行に固定するためのマウントパーツについて
使用するモーターはRE16で、ギアヘッドはGP16Aを使用しています。GP16Aは、固定方法がM2ネジ2本のみとなっているため、競技ロボット用途だと、振動に対応できずに外れてしまうことがあります。
そこで、クランプ機構を用いてギアヘッドを固定する方式を取りました。
まだ実際に組み込んでいませんが、実際に組み込んだ時にはまた報告します。
クランプは、ロボット底面から1.5mmの六角レンチで締め付けができるよう設計しました。ロボット底板には、レンチを通すための穴を開けておく必要があります。
マウント底にはM3のタップが4か所切ってあり、簡単に固定できるようになっています。
軸受けにボールベアリングを挟んでみました。
GP16Aはスリーブ軸受けなので、他衝撃性に不安があったため、Nitroのゆーき先輩にアドバイス頂きながら実装しました。軸のふらつきが大きく改善されたので、効果はあるんじゃないかと思います。
今まではライトウェイトリーグの重量だったのであまり問題になりませんでしたが、オープン規格の重量で走らせると、軸受けがダメになってくるのは当然だと思います。
簡単な対策なので、ぜひしておきたいですね。
続いて、オムニホイールについてです。
前回、POMの円盤を切り出し、側面に溝を掘ってOリングをはめ込むタイプのサイドホイールを製作しましたが、溝が浅いとOリングが外れ、溝が深いとグリップしなくなる、結果的に大失敗なグリップが完成しました。
今回はその反省を生かして、新しい設計・方法でサイドホイールを製作しました。
グリップ材はシリコン、軸受けには黄銅、カバーはジュラルミン製です。
グリップにシリコンを選んだのは、単純にグリップ性能が高いのと、温度に強い(カーペットとの強い摩擦熱で劣化しない)、フィールドの白線を変色しない(黒ゴムは白線を黒く塗ってしまう恐れ)、が主な理由です。
1つのサイドホイールを作るのに必要な部品点数は全部で4つ
・シリコンワッシャー(MonotaRO URL)
・黄銅スペーサー(ヒロスギネット URL)
・CNC削り出しのパーツ x2点
正直言って生産性はものすごく低いです。
特に、CNC削り出しのパーツは、例えば20サイドホイールのオムニを4つ作るだけで
2[個/サイドホイール] x 20[サイドホイール/オムニホイール] x 4[オムニホイール]
なので、合計160[個]削り出す必要があるんです。
バリ取りはマジで苦労します…。
サイドホイールを180個(確かこのくらい)削り出しているところです。
加工時間が長く、オーバーヒート保護のため何回かに分けて加工しています。
写真は1.0[mm]のポケットが全部終了したところ、この次に、軸受け圧入穴(φ3.96)と外形切削をします。
写真は、関東大会出場のため、世界大会機のオムニホイールに、新しいサイドホイールを実装しているところです。ダイセンさんのオムニホイールだと、サイドホイールの軸は一本の針金だったと思いますが、自分が設計しているのは全て、軸を単体で用意しています。
サイドホイール軸に使用しているのは
・2x6 平行ピン 硬質(ステンレス) (MonotaRO URL)
本来ならもう少し個数/値段の良いものを探して買うべきだと思います。
関連商品でささっと選んでしまいました。
材料は、ある程度硬ければなんでも良いと思います。黄銅と鉄の組み合わせで、ある程度の滑りを得られるので、結果的に横滑りのロスが大幅に減ります。世界大会機に組み込んで走らせてみましたが、安定性が段違いでした。
グリップ材が外れる問題に関して、新しいタイプではグリップ材が板形状で奥まで入り込んでいるため、 基本的に外部からの圧力で外れることはありません。加えて、体積のあるシリコンゴムがダンパの役割を果たしてくれるので、走行中の振動が大きく改善されました(予想はしていたが思ったより効果があった)。
最後に、サイドホイールの組み立て手順を紹介します。
4つの部品を写真のように組み合わせます。
実際には、片側のジュラルミンパーツに軸受けを圧入したものを用意し、それにシリコンワッシャーとジュラルミンパーツ(もう片側)を乗せて、圧入をかけます。
ヒロスギさんのM2スペーサーは内径2.2φなので、φ2.2ピッタリの軸をボール盤に咥え、下にφ2.5くらいの穴を開けた土台を用意し、その間に上の組み合わせを挟み込み、軸を通した状態でエイヤッと圧入します。
完成するとこんな感じになります。
以上です、では!
質問などはコメントにお願いします。
コメント
コメント一覧 (46)
今ボール盤の購入を考えているのですが、選定基準がよくわかりません。
用途は主にアルミ合金の加工です。
オススメのメーカー等ありましたら、教えていただけると助かります。
ホビー用のボール盤でよくあるのが,基板加工用の高回転タイプのものを買ってしまう事です.穴あけドリルは,基本的に直径が大きくなるほど回転数を下げなくてはいけませんから,アルミに色々な直径の穴を開けたいのであれば,ベルト付け替えで回転数が変更できるのが前提条件です.
候補となるとは
https://www.monotaro.com/p/0868/7612/
https://www.monotaro.com/p/1107/8383/
https://www.monotaro.com/p/2246/4006/
https://www.monotaro.com/p/3038/6405/
この辺りでしょうか.当然ですが,家に置くのであれば,強度のある床を確保してください.そのままフローリングなんかに置いてしまうと,最悪家が壊れます.
例えばこのようなミニタイプのボール盤
https://www.monotaro.com/g/00525994/
は回転数が高すぎるため,2mm以上の直径の穴は難しいと思います.
直径が大きくなる=円周長が長くなり,同じ回転数であれば直径が大きい方が,刃先が材料を削るスピードが上がります.ここで,刃物が材料を削るスピードが早すぎると,摩擦熱が大きくなり刃や材料が傷んだり,固定するために大きな力が必要になったりしてしまいます.
回転数やドリルの直径にかかわらず,工作物の固定が不十分であると,材料が高速で振り回されてしまい非常に危険です.
特に,早い回転数で大きな直径の穴を開けるのは絶対に避けてください.
また,ボール盤での作業中の軍手の着用も絶対に避けてください.
https://www.youtube.com/watch?v=VBtrIfXJPZs
詳しいことは,インターネットで色々と調べると出てきます.
ありがとうございます。
ねじは,雄ねじと雌ねじ(ボルトとナット)をペアにして締めるものですが,雌ねじの作り方として「タップ」と呼ばれる方法があります.
これは,材料に対して,ねじの規格により定められた下穴を開け,タップという道具を使って,材料に直接ねじを切ります.これで,材料に直接ねじを締め付けることができます.
他にもタッピングねじと言って,柔らかい材料を相手に,直接ねじを切り込む仕組みのねじもあります(木ネジなど).
タップの下穴の直径は,ねじの規格(M2, M3など)によって決まっています.例えば写真のねじはM2ですので,下穴1.6mmを空けてからM2のタップでねじを切っています.
詳しくは以下のページなどを参考にしてください.
http://jitukawa.net/kikaku2.html
約30グラム前後です.
ただし,これはオープンリーグ用に,強度を重視して設計されたものなので,ライトウェイト用であればもう少し軽くなるよう設計します.以前ライトウェイト用に作ったモデルは約20グラムでした.
できれば内径から順に教えていただきたいのですが…
サイドホイールの寸法は,市販品の寸法からおおよそ決まってくると思うのですが,内径は記事中に書いてあります.外形は10mmで,シリコンワッシャーがアルミケーシングから外側に1mmはみ出すような構造になります.
アルミケースの内径に関しては,圧入構造になっていますので,かなり加工精度が必要です.小さすぎるとひしゃげてしまいますし,大きすぎると抜けてしまいます.機械や刃物によっても大きく左右されますので,いずれにせよ試行錯誤とフィードバックが必要になると思います.
CNCのポケット加工の仕方がよくわからないんですけど、
教えていただけますか?
CADのときに作るのですか?CAMでのGCodaでやるんでしょうか?
ポケット加工というのは,おそらく2.5D加工の平行ポケットの事だと思いますが,切り込む図形の外形線自体はCADでスケッチします。深さ指定やパスの生成などは,CAMを使って行います。GcodeはCAMの出力する,CNCを動かすためのプログラムの事です。
恐らく「(BBや真鍮スペーサが)圧入されるジュラルミンパーツ」の意味かと思いますが
記事内にはそのようなパーツが複数存在します。しかし,どれも寸法のパラメータが多過ぎるため,質問にはお答えできません。すみません。
どれも寸法のパラメータが多過ぎるため,質問にはお答えできません。すみません。
(A5052など、いろいろあるそうですが、よくわかりません。)
基本的に”アルミ”とだけ言うと,純アルミ(1000系)をさす事が多いですので,A2017やA5052などは”アルミ合金”と呼ばれて差別されます。
http://www.alumitech.co.jp/html/download4.html
以上URLに主な特性が書いてあるのですが
ロボットにおいては,板金曲げにはA5052を,曲げの必要ない一般的なフレームにはA2017を,構造上細い箇所が発生したり瞬間的に大きな衝撃がかかる箇所にはあ7075を,それぞれ使っています。
オムニホイールは,メインフレームもサイドホイールも全てA2017です。
t3(tは厚さの記号)以上のA2017は「ひーくんの材料屋さん」というショップを経由して,白銅さんの”ハイスペック2017”を購入して使っています。反りや厚さの公差が小さく,ロボットに使いやすいです。
t3以下の薄板は,アールティーロボットショップさんでカットされた板を使っています。A2017の他にA5052も基本こちらで購入しています。
カテゴリ「製品まとめ」の一番下の記事「オンラインショップまとめ」にリンク先をまとめてありますので,良ければそちらからどうぞ。
シリコンワッシャーの直径が12mm,ジュラルミンのパーツの外形が10mmで,1mmはみ出す設計になっています。
僕も詳しいことは分かりませんが,雌ねじスペーサ(ねじが切ってあってスペーサに対してネジ止めできるタイプ)において,丸型スペーサは六角スペーサのようにレンチで固定して締める事ができないため,スリ割にマイナスドライバなどを噛ませて締められるようになっているんだと思います。
オムニホイールのメインフレームですと,一つあたりおよそ15~30分程度です。
切削条件やエンドミル,機械により全然違う時間になります。私は一般家庭で運用しているため,騒音を気にして切削条件を控えめに設定しています。ただ基本的には,ホビー用途であれば,時間をかけてじっくり削るのが基本になるかと思います。
それぞれ細さは最低何mm位残せば強度を保てますか?
(僕はライトウェイトリーグに出場しています。)
難しい質問ですね.
前提として,僕の設計するオムニホイールは「競技用」と割り切って設計しており,定期的に交換などのメンテナンスを行うことを前提としています.言い換えれば,多少無理がある設計をしてパフォーマンスを稼ぎ,不足分は部品の交換で補っています.
強度の考察は,一度形状を解析機能のあるCADで構成して,実際に負荷計算をしてみないと何とも言えません.あるいは実際に作って試してみるのもいいと思います.実物で試した経験とカンを頼りに作るのもいいですが,だいたい無駄に強度を残す結果になります.あとはそれを良いと割り切れるかどうかです.
ありがとうございます。
何を使っていらっしゃいますか?
サイドホイールを回すためには、ある程度メインホイール部分の、サイドホイール
をつける部分に、余裕を持たせなければいけないと思いますが、何mmくらい空けていらっしゃるでしょうか?
因みに耐久試験などは行ったのでしょうか?
ロボカップ用となると必要強度は十分だと思いますが、、、
(ここでの強度はサイドホイールのすべりが急激に落ちる点という設定で)
記事「コメント返し#2」にてコメントのお返事を書かせていただきました。
はい、ピンは1本ずつはめ込みで固定しています。
DAISENさんのオムニホイールのように針金で連結したものを使う方法でも良いと思いますが、すべり軸受においては軸側の材料を硬くしたい設計意図があったため、軸側はステンレスの平行ピンを使うことにしました。
溝加工は直径2.00(交差0 ~ -0.03)のエンドミルで行いますので、H6公差のピンなら多少きつい位で止まります。
返信が遅くなり申し訳ありません。
長期間コメントのチェックをしていませんでした。
正確な時間を計算していないので分かりません。
時間がかかるにも関わらず、わざわざ金属パーツでサイドホイールを構成したのには、頑丈に作ることで後々のメンテナンスの手間を回避しようという戦略がありました。結果的に過去に作ったホイールよりもメンテナンス性耐久性共に高く仕上がったので、思惑通り動いた形にはなりました。