以前の記事
でプロトタイプ宣言していた,昇圧回路&スイッチング回路について.

バッテリー電圧(3.5~40V Approx.)から昇圧(Up to 65V)した電圧を,外部のキャパシタにチャージし,マイコンからの信号によって,外部のソレノイドへ通電します.
このモジュールの開発前には,昇圧回路モジュールとFETスイッチング回路を別で構成していたため,キッカーシステムの部品数の増加とスペースの肥大化が問題でした.
そこで,全ての機能を集約した,オールインワンのキッカー回路として,従来の昇圧回路モジュールに搭載されている電圧LEDや電圧アジャスト機能を備えたモジュールを設計しました.

ブロックダイアグラム:Block diagram
点線で囲まれた部分を,モジュールとして構成してあります.
外部にキャパシタを配置したのが特徴的ですが,RCJのロボットを開発する上では大容量のキャパシタはかなりのスペースを占領するため,キャパシタの配置を自由にできると設計が非常にラクになります.


EAGLEでの設計:Designing on EAGLE
今回このような昇圧電圧を扱うモジュールを設計するのは初めてであったため,安全に関しては慎重になりすぎた部分があります.
マイコンの入力はフォトカプラを用いて完全に絶縁し,FETはソレノイドの短絡状態が持続しても熱を持たないように,極端なオーバースペックで設計がされています.
これらは結果として,高い信頼性を確保できる事になりましたが,モジュールの約半分をこれらFETとフォトカプラが占めている状態をみると,非常に無駄な設計であると言えます.
今後もう少しFET及びゲートドライブ回路の改良を行う事で,より省スペースにまとめる事が出来るのではないかと考えているところです.
実際,もう少し小型化ができてしまえば,秋月の昇圧モジュールと同じサイズで,スイッチング回路も備えたモジュールが作れそうです. イニシャルコスト確保できたら,量産して売れるかも!?
昇圧モジュールのスペックについては,LM2577のスペックに準拠します.
LM2577データシート(URL)を参照して下さい.
出力電圧は,可変抵抗器によって変更可能です.出力電圧が60[V]を超えない範囲で調整することを推奨します.また,入出力電圧比があまり大きすぎる(約3倍が目安)と,安定した出力電圧を得られなくなります.
この昇圧モジュールは,JapanOpen2017中津川大会のロボットに2個搭載されていて,今のところ故障もなく順調に動作しています.
例として,外部キャパシタに50V1000uFのアルミ電解コンデンサを4並列,チャージ電圧は45[V]で使用していますが,タカハのCB1037でRCJのキック制限を超える程度のパワーは出せています.
また,現時点では昇圧電圧のリミット回路が実装されていません.
出力電圧が65[V]を超えないように,可変抵抗の回す方向および回し過ぎに注意して下さい.
今後,可変抵抗の可変範囲を調整するなどして,完全に振り切った場合でも安全位置を保てるような実装をしていきたいと思います.

パーツリスト:Partslist
前回のIMU同様にデータを公開します.

概要:Abstract
RoboCupJunior Soccer競技用ロボットの,昇圧キッカー用に設計したものです.バッテリー電圧(3.5~40V Approx.)から昇圧(Up to 65V)した電圧を,外部のキャパシタにチャージし,マイコンからの信号によって,外部のソレノイドへ通電します.
このモジュールの開発前には,昇圧回路モジュールとFETスイッチング回路を別で構成していたため,キッカーシステムの部品数の増加とスペースの肥大化が問題でした.
そこで,全ての機能を集約した,オールインワンのキッカー回路として,従来の昇圧回路モジュールに搭載されている電圧LEDや電圧アジャスト機能を備えたモジュールを設計しました.

ブロックダイアグラム:Block diagram
点線で囲まれた部分を,モジュールとして構成してあります.
外部にキャパシタを配置したのが特徴的ですが,RCJのロボットを開発する上では大容量のキャパシタはかなりのスペースを占領するため,キャパシタの配置を自由にできると設計が非常にラクになります.
設計:Design


EAGLEでの設計:Designing on EAGLE
今回このような昇圧電圧を扱うモジュールを設計するのは初めてであったため,安全に関しては慎重になりすぎた部分があります.
マイコンの入力はフォトカプラを用いて完全に絶縁し,FETはソレノイドの短絡状態が持続しても熱を持たないように,極端なオーバースペックで設計がされています.
これらは結果として,高い信頼性を確保できる事になりましたが,モジュールの約半分をこれらFETとフォトカプラが占めている状態をみると,非常に無駄な設計であると言えます.
今後もう少しFET及びゲートドライブ回路の改良を行う事で,より省スペースにまとめる事が出来るのではないかと考えているところです.
実際,もう少し小型化ができてしまえば,秋月の昇圧モジュールと同じサイズで,スイッチング回路も備えたモジュールが作れそうです. イニシャルコスト確保できたら,量産して売れるかも!?
昇圧モジュールのスペックについては,LM2577のスペックに準拠します.
LM2577データシート(URL)を参照して下さい.
出力電圧は,可変抵抗器によって変更可能です.出力電圧が60[V]を超えない範囲で調整することを推奨します.また,入出力電圧比があまり大きすぎる(約3倍が目安)と,安定した出力電圧を得られなくなります.
この昇圧モジュールは,JapanOpen2017中津川大会のロボットに2個搭載されていて,今のところ故障もなく順調に動作しています.
例として,外部キャパシタに50V1000uFのアルミ電解コンデンサを4並列,チャージ電圧は45[V]で使用していますが,タカハのCB1037でRCJのキック制限を超える程度のパワーは出せています.
また,現時点では昇圧電圧のリミット回路が実装されていません.
出力電圧が65[V]を超えないように,可変抵抗の回す方向および回し過ぎに注意して下さい.
今後,可変抵抗の可変範囲を調整するなどして,完全に振り切った場合でも安全位置を保てるような実装をしていきたいと思います.
データ配布:Resoures publication

パーツリスト:Partslist
前回のIMU同様にデータを公開します.
※注意※
当データは無料で提供されていますが,引用の範囲を超えるもの(データの販売や再配布など)はしないで下さい.
当配布データの誤った情報によって,何らかの損失・損害等が発生した場合においても,当ブログ管理者に一切の責任を問わないことに同意して下さい.
KickerUnit.zip(ダウンロード)
モジュールに使われている特殊部品は,付属のライブラリから参照ができます.
付属ライブラリをEAGLEプロジェクト内で有効にした状態で,ボードファイルと回路図ファイルを開いて下さい.
当データは無料で提供されていますが,引用の範囲を超えるもの(データの販売や再配布など)はしないで下さい.
当配布データの誤った情報によって,何らかの損失・損害等が発生した場合においても,当ブログ管理者に一切の責任を問わないことに同意して下さい.
KickerUnit.zip(ダウンロード)
モジュールに使われている特殊部品は,付属のライブラリから参照ができます.
付属ライブラリをEAGLEプロジェクト内で有効にした状態で,ボードファイルと回路図ファイルを開いて下さい.
コメント
コメント一覧 (15)
http://gcraud.blog.jp/archives/37955989.htmlを拝見しました
1000uFと4700uFでは、どんな違いがありましたか?
また1000uFを並列にせずに1つで使用することはかのだと思いますか?
「1000uFを並列にせずに1つで使用することは可能だと思いますか?」です。
あと、追加で申し訳ないですが、2015の世界大会に出場したロボットで使用していたコンデンサについてです。アルミ電解コンデンサではなく、オーディオコンデンサを使ったのはなぜですか?
いつもブログ見させてもらってます。
質問なのですが、このキッカーモジュールの高さは何mm程でしょうか?
お時間のある時で構いませんので教えてください。
よろしくお願いします。
こんにちは。
キッカーモジュールの厚さは一番背の高い部品は電解コンデンサで、その高さが5mmですので、基板の厚さ1.6mmを足して計6.6mmになります。基板の厚さを落とせば、もう少し抑えられそうです。
もともと、薄いスペースに収納するために設計されたものなので、ボリュームも横型が使われていたり、高さを抑える構造をしています。
販売はどうしても考えていませんか?
こんにちは。
私も販売活動したいのですが、現状それをできる時間が無いというのが現状です。
ですので、こうしてオープンソースハードウェア化するに留まっています。
今後の販売への意欲はありますが、実現するかもわかりません、ごめんなさい。
ただ、こうしてリクエスト頂けた事は心に留めておきたいと思います。
昇圧回路のはじめあたりにあった100μFのコンデンサの定格電圧は入力電圧に合わせるのかそれとも出力(50vくらい)に合わせるのかがわかりません。
返信よろしくお願いします。
入力側の100uのキャパシタは、昇圧回路が電流を吸い始めた時の電圧変動を抑える目的で搭載されているもので、出力電圧に関係するものではありません。キャパシタの定格電圧は、入力側の電圧にすこし余裕を持たせて選定すればいいはずです。
この記事で紹介されている基板では、出力側のソレノイド駆動補助用のキャパシタは回路図には存在せず、外部に外付けする使用になっていますので、出力側のキャパシタは別に存在します。
外付けのキャパシタがこのモジュールの外にあって、ソレノイドも外付けすると思うのですが、回路図に書かれているJP2,JP3のコネクタのシンボル(スルーホール)をどちらにどうやって接続するのかがどうしてもわかりません。また、VBATT,60Vと表記されているところは、同じ表記の場所同士をつなぐということでしょうか。
返信いただけると幸いです。
> 外付けのキャパシタがこのモジュールの外にあって、ソレノイドも外付けすると思うのですが
これはご理解のとおりです。
> 回路図に書かれているJP2,JP3のコネクタのシンボル(スルーホール)をどちらにどうやって接続するのかがどうしてもわかりません。
JP2が外付けのキャパシタ、JP3がソレノイドになります。
JP2のほうは、DC/DCコンバータの60V出力から並列に引き出されたコネクタなので、電源ラインであることは読み取れるかと思います。JP3に関しては、Nch MOSFETをスイッチングに使っている事が読み取れれば、ソレノイドの駆動回路であることは理解できます。もしMOSFETを使ったスイッチング回路自体の知識がなければ、以下などを調べるといいです。
https://www.marutsu.co.jp/pc/static/large_order/fet_3
> また、VBATT,60Vと表記されているところは、同じ表記の場所同士をつなぐということでしょうか。
ご理解のとおりです。回路CADにおいて、緑のライン(配線)にはすべて名前がついていて、名前が一致するライン同士はショートするようになっています。すべて線で引き回してしまうと可読性が悪くなるため、ラベルを使います。
いつも分かりやすい記事を有難うございます。
キッカー駆動用の回路について質問なのですが、
大容量のキャパシタと昇圧回路の間に、充電時の電流制限用の抵抗などは必要でしょうか。
それとも1000~5000uF程度のキャパシタを充電するのであればそのような抵抗は必要ありませんか。
ご教授いただければ幸いです。
よろしくお願いします。
はじめまして、レスポンスが遅く大変申し訳無いです。
充電時の電流制限用の抵抗について。
そもそも昇圧回路のDCDCコンバータが充電時に吸う電流が問題になるケースというのは、電流の変化(特に、空のキャパシタを充電開始した瞬間や、DCモータを回し始めた瞬間などの、電流変化が大きい挙動)が、(1)本来電圧が一定に保たれていなければならないバス(マイコンの電源等)に対して影響する場合か、(2)信号に対して意図しない電位を与えてしまう場合が主になるかと思います。
1)はたいてい「共通インピーダンス」がキーワードになるかと思います。電圧が一定に保たれていなければならないデバイス(マイコン等)とそうでないデバイス(モータやソレノイド等)が、おなじ経路で共通の抵抗を持っていると、この問題が起きます。明らかな例としては、バッテリの内部抵抗や配線の抵抗などがあります。これは共通インピーダンスを小さくしたり、電源を絶縁型にしたりして解決していきます。
2)は「EMIノイズ」「クロストーク」「ノーマルモード/コモンモードノイズ」「チョークコイル」等がキーワードになるかと思います。ケーブルに電流が流れるとその周囲には磁気を生じるため、それが再び別のケーブルに鎖交すれば電流を生じます。これはケーブルをシールドしたりツイストペアしたり、チョークコイルを経路に入れたりして解決していきます。
以上のようなかたちで、電流制限が必要かどうかを議論するには、問題がどのモードで起きているか(電圧なのかEMIノイズなのか)と、そもそも起きているか(試していないのに対策について考えているならまずは試すべき)が大事だと思います。
回路図にあるスイッチング用のFETはNchだと思います。
Nchをスイッチングに使用する場合は、ゲート-GND間に抵抗が必要だと思うのですが、この回路図にはなぜ抵抗がないのでしょうか。
私の認識が間違っていたら申し訳ないのですが、教えていただければ幸いです。
はじめまして
スイッチング用のFETはNch MOSFETで、それのGateをプッシュプル駆動のフォトカプラで制御しているため、ゲートの駆動は問題なく行えます。キーワードは「プッシュプル」「オープンドレイン」「オープンコレクタ」等になるかと思います。
MOSFETのGate-Source間を駆動するというのは、ご理解のとおりキャパシタを充電/放電する動作と同じと考えられます。もしGate DriverがPush/Pull駆動タイプではなく、Push or Pullどちらか片方のスイッチング機能しか持たない場合(例えば1回路1スイッチ出力のフォトカプラを使う場合など)には、Gate-Source間の放電抵抗を用いて放電(Pull)機能を付与、あるいはGate-Gate駆動電圧, 間の充電抵抗を使って充電(Push)機能を付与します。
記事中に記載がなくてすみませんが、回路に使われているPush/Pull駆動タイプのフォトカプラTLP251 Datasheetは以下になります。
https://www.mouser.jp/datasheet/2/408/TLP251_datasheet_en_20190617-1760565.pdf
加えてですが、記事中の回路にはTLP251の駆動出力(Pin 6,7)とMOSFETの間にダンパ抵抗がなく、悪い実装になっていますので留意してほしいです。MOSFETのGate-Source間はキャパシタと等価ですので、充放電の際に低いインピーダンスでGate駆動電圧やGNDとつなぐと、Gate駆動側の電源にスパイクノイズを生じます。これを防ぐためにGateのダンパ抵抗を追加してGate駆動電流を制限する方がいいです。
参考になれば幸いです。